土曜日、
名古屋在住イタリア系不動産王のはまさんにお誘い頂き、かのエンツォ・フェラ−リ、マセラティ・クアトロポルテのデザインを手がけた奥山清行さんの
講演へ。
自動車にかかわる仕事をする者にとって
エンツォ・フェラーリは特に憧れの的ではないだろうか。
僕も展示会の自社ブースで、幸運にもコクピットに座ったことがあるが、あれはもう自動車ではい。
もっと攻撃的な、そう・・・・戦闘機。
空を飛んでいないだけでこれは戦闘機なのだ。
奥山さんのお話で出たが、最高速が350キロを超えてしまうような車は、実は、「飛ばさない」方が難しいという。
最高峰のレースの世界で、車が宙を舞ってしまう事故を見たことがある人は分かると思うが、あれが現実。
飛行機を作るよりも難しい技術とまで言われているそうだ。
っというわけで、とっても楽しみにしていて迎えた七夕の土曜日。
朝一、千葉は東浪見ビーチで波乗りし、仮眠を取って、はまさんとの待ち合わせ。
講演場所はムサビ(武蔵野美術大学)@小平。
なぜ小平のような辺鄙な場所でやるかというと、
それは、
「奥山さんがムサビ出身だから!」
僕は全然知らなかった・・・です(笑)
奥山さんの話は、すさまじかった。
"突き抜けている人"に共通していることは、もはや自分の専門領域を超えているということ。
・日本とは
・ものづくりとは
・プロとアマとの違いとは
そして
・クリエイティブとは何か
まで話は及ぶ。
以下、順番に。
●エンツォフェラーリ
・「需要よりも1台少なく作れ」
というエンツォの言葉どおり、生産された台数は349台。
(奥山さんは349台と言われていたが、最終的には399台だったと記憶している)
ジュネーブのショーで発表した瞬間に受注が入り、手付け(7700万の半額)を入れる客が多数。
2年後の発売まで、それが開発経費になってしまう。
それがたった3000人しか社員のいない、フェラーリの強さ。
トヨタ、GMに比べたら中小企業。
・エンツォのメッセージ
喜怒哀楽が少なく、生ぬるくなって来た現在(いま)だからこそ訴えたいのは「暴力性」。
最高時速360キロは、その象徴。
フェラーリの赤はブラッディ・レッド(血の赤)である。
そういう「物語」こそがブランドをつくる。
ブランド=ソサエティ。
普段は、安い給料で質素な生活を送っているのに、30万円もするような毛皮のコートを買ってしまうイタリア人。
彼らには日本人と同じ「
匠の血」が流れている。
・素材
この話、僕的にはかなりツボでした。
デザインモデル(モックアップ)は、通常、木で作る。
モックは、「木型」とも言う。
フェラーリは違う。
エポウッド(エポキシ樹脂)で作る。
なぜか?
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モックを「限りなくホンモノ」に近づけるためである。
車は堅いもの。
「堅い車」のモックは、「堅い素材」で作らないとダメ。
それを木で作ると、なんとも表現しがたい違和感を感じると言う。
一見すると当たり前に聞こえるかもしれないが、それがすごいのだ。
簡単なことではない、コストも跳ね上がるし、何よりも、技術が問われる。
ハンパな技術ではない。
更に、高度な技術が問われるのにも関らず、これをわずか数日で仕上げてしまう。
世界の、いや、日本の最新の技術を使っても2週間はかかる。
手作業のすさまじさ。
それを可能にするのが、ミケランジェロ、ダ・ヴィンチの子孫であるイタリア職人なのだ。
奥山さん曰く
ここが日本車とイタ車のデザインの違いだと。
「
線と面」という、言わば2次元のデザインが日本車。
それに「
カタマリ感」が加わったものがイタリア車。
そのoriginになっているのは、モックの作り方に大きく起因するのだろう。
・最後に、エンツォのエピソードを。
2年間のデザインコンセプト開発期間を経て、何度もフェラーリ社にプレゼンしたが、承認が降りなかった。
そして最後のプレゼン。
これが失敗したら受注を逃すだろうという日が訪れる。
渾身のモック。しかしなぜか違和感を感じる奥山氏。
プレゼンは失敗した。
フェラーリ社 社長が帰るのをサンドイッチで半ば強引に15分引き留め、
その間に奥山氏が書き上げたスケッチがある。
奥山氏の中に2年間溜まっていたものを一気に吐き出したものだ。
「やればできるじゃん」
これが、今のエンツォのデザインの原型となる。
奥山氏の所属するデザイン工房ピニファリーナはめでたく受注となるわけだが、その後も試行錯誤は続き、最後は多数決に。
30対3で、奥山氏が推すデザインは敗北。
そこで、ダイレクターのジャッジメントが下る。
「デザインに多数決はありえない」
こうしてできたものがエンツォ・フェラーリなのである。
でも、これってデザインだけの話ではないと思う。
この「乱」の時代、人と同じことをやっていてはダメなのだと思う。
「多数決」を跳ね返せるだけの、知識・経験・・・そして一番大事なのが、それに裏付けられた「直感」。
<つづく>